そばまで行き、まさに教科書の角で頭を叩こうとしたとき、ヘレネは突っ伏したままゆっくりとした動きで避けた。

しかしまだ静かに寝息を立てている。先生の教科書の一撃を完全に熟睡しながらにして避けたのだ。


頭を外して空を切った教科書が机に勢いよくぶつかって派手に音をたてる。


その音に反応してヘレネの頭がピクッと小さく動き、その後だるそうに頭を持ち上げた。

やけにプルプルと潤った官能的な唇を人差し指の先で軽くなぞりながら口を開くと

「ごめんね、センセ。許して?」

と可愛らしい声で言い、先生が再び振り上げた教科書を静かに指先で止める。