「孝太郎くん・・・」
居酒屋の前で立っていた孝太郎くんの背中に向かって声を掛けた。
その声は、おそらく小さく自信がなさげだっただろう。
私の声が届いた孝太郎くんは振り返っったようで、服が擦れる音が聞こえた。
それでも私は、顔を上げて彼の表情を見ることができずにいた。
「なんで・・・ここにいるの?」
彼は、驚いた様子で、私に聞いてきた。
「・・・だって、孝太郎くんが抜けようって」
そう、あなたが抜けようって言ったから・・・出てきたんやで。
「あっ、俺声に出してた?」
動揺を隠すことできないでいる彼の表情が、イメージとは合わなくて笑ってしまった。
もしかして、心の声を口に出してしまったの?
「うん。孝太郎くんって、おもしろいんやね」
そう言って笑うと、彼は恥ずかしそうに笑っていた。
その照れている姿がまた意外で、私の顔が緩むのがわかった。
「かわいい・・・」
目を細めて言う彼の言葉に、私の顔は急激に熱くなっていき、彼の顔を見ることができなくなっていた。
私の表情を見て、
「もしかして、また口に出してた?」
と彼は、顔を赤くしていた。