「奈々ちゃん、看護師さんなんだね」


「はい」


私は、テーブルの端に座っていて、彼は私の右側に座り、右手で頬杖を付いて私の顔を覗き込むようにしているので二人だけで話しているのと同じ状態になっていた。


どうも、こんなイケメンに見つめられたら、緊張して上手に受け答えができない。


イケメンというか、いきなり”奈々ちゃん”なんて呼ばれたから、少し軽い人なのかと警戒してしまったのが実際のところ。


「俺はね、銀行員。似合わないでしょ」


確かに、こんな軽そうな人が、お堅い銀行員なんて・・・。


なかなか緊張も解けないまま、席が離れてしまったので、話すことがなくなってしまった。


しかし、どうしても彼の方が気になって、他の人に話し掛けられても、上の空だった。



今彼は、木村先輩と坂口さんと3人で話している。時折彼の笑い声が聞こえてくる。


「私、ちょっとお手洗いに行ってくるね・・・」


少し、気分を変えたくて席を立ってお手洗いに行き、出た時にあの甘い声で呼び止められた。