「おー孝太郎!遅いぞ〜!」

「すまん。残業があってさ・・・」

突然登場した彼は、スーツの上着を脱ぎ私の隣に座った。


さっきまで隣にいた男性が

「おい孝太郎、保田さんと話してたのに」

と愚痴っていたが、そんなことは聞いていないといった感じで、


「あぁ、疲れた」

と言いながら、ネクタイを緩め、腕まくりをしていた。


その仕草と締まった腕がセクシーで、見入ってしまった。


彼の横顔をチラッと見ると、まつ毛が長くて、鼻も高くて、正面から見なくてもイケメンだとわかった。


髪は黒く、くせ毛なのか毛先の動きがナチュラルで好感が持てる。


「じゃあ、全員揃ったところで、もう一回乾杯といきますか!孝太郎からの一言があるので、注目してください!」


坂口さんは、私の隣の彼に話を振った。


「ただ今、ご紹介にあずかりました高橋孝太郎です。本日は、俺の29歳の誕生日を祝うために集まってくれてありがとう!では、乾杯!」



「おまえのために集まってるんじゃないぞ!」


とヤジが飛んでいたが、そんなことも気にせず、彼はビールを飲み干した。


なんて、マイペースな人なんやろう・・・。


しかも・・・29歳って・・・。


「ねぇ、奈々も29歳だから、二人は生年月日が同じじゃないの?」


そう、今隣にいる高橋孝太郎という男は、私と生年月日が同じなんだ。


「あ、うん」


私の歯切れの悪い返事にも、顔を覗き込んで来て、「すごい偶然やね」と目を細めて言う彼の表情に胸が高鳴っていた。