「こんな気持ちになったの初めてなんや・・・・・・正直、今まで本気で付き合ったことがなかったんやけど・・・って最低な男やんな。でも、これだけは信じて欲しい。奈々ちゃんのことは・・・本気なんや」



周りの音なんて聞こえなくなり、彼の声だけが私の耳に入ってきた。



私は、しばらく放心状態となり、動けないでいた。


目の前にいる彼も、私を見つめて動かない。



今までどんな風にして動いてきたのか、どんな風に声を出していたのかもわからなくなっていた。


彼が目を閉じて、大きなため息をついた瞬間、私の脳は動きだした。


そして、考えるよりも、体が先に動いていた。




私は、彼の胸に顔を埋めるように抱きついていた。



抱きついた瞬間、彼の体がビクッと強張ったのがわかった。


しかし、私の脳は意外にも冷静で、自分でも驚いていた。