彼は泣いている私の頭を優しく撫でてくれた。


「・・・・・・変なことに巻き込んでごめんね」


「気にしなくていいよ」


優しくしないで・・・・・・勘違いしてしまうから。


「孝太郎くん、演技が上手やね!役者さんになれるんじゃない?私の猿芝居に付き合ってくれてありがとう」



私は顔を上げ、精一杯の強がりを口にして、自分の気持ちを隠そうとした。


「・・・・・・じゃあ、さっきのは演技?」


なんで、そんな寂しそうな顔をするんよ・・・・・・。



「そう。演技・・・あれ元カレなんやけど、しつこくて・・・ごめんね、利用しちゃって」


軽く言ったつもりだった・・・・・・。



「・・・じゃあ、なんでそんな悲しそうな顔をして泣いてるんや?」



そう・・・私は泣いていた。



自分の気持ちに嘘をつくことに反発するように泣いていた。



「・・・・・・孝太郎くんは、私なんて相手にもしてくれないんでしょ?」



精一杯出した言葉がこれだった。


俯いていてはいけないと思い、彼の目を見て言った。


きっと、泣いてるから、ひどい顔をしているはず。



でも、彼の目は優しくて、また涙がこぼれた。