「冗談じゃないよ。彼は私の大切な人やから」


こんな形で気持ちを伝えたくはなかった・・・・・・でも、言ってしまった。



後戻りはできない。


・・・・・・あとで、謝ろう。



「・・・じゃあ、お前は・・・奈々のことどう思ってるんや?」



なんでそんなことを聞くんよ・・・・・孝太郎くんは、私のことはどうも思ってないんやから・・・。



「誰にも渡したくないと思ってるよ」




思わぬ言葉に私は驚き、孝太郎くんの顔を見上げた。


少しだけ暗くなった空は、彼の顔に影を落としていた。



真剣な表情で悟を見ている彼を見ていると、これが演技だとわかっていても嬉しくて、涙が出てくる。



「・・・・・・泣くくらいその男が好きなんか?」


悟の問い掛けに、私は本能のまま頷いた。



「わかったよ。もうあきらめる」



そう言うと、悟は私たちに背を向けて立ち去ったと同時に、私は孝太郎くんの腕から離れた。