「お疲れ様でした」

一日の仕事が終わり、病院から出てしばらくした所で、この数日間ですっかり影が薄くなってしまった男に声を掛けられた。


「奈々」


悟だ・・・・・・。


よくも平気な顔をして私の前に現れることができるものだ。


木村先輩の言う通り、右の頬が青く痣になっている。


「・・・・・・」


「奈々、話を聞いてくれ」


いまさら何の話よ!


「私は話すことはないです」


そう言って通り過ぎようとしたが、腕を掴まれて進むことができなくなってしまった。


「頼む。ちょっとでいいから」


しつこいし!


「もう別れたんやから、話すことなんてないし!」


そう言って、思い切り悟の腕を振り払い、一瞬睨み付けると、前を向き、歩き始めた。


「俺は別れたつもりはないぞ!」


はぁ?意味わからんし!


私は悟の言葉を無視して歩き続けていたが、一定の距離を保ち、彼は後ろから言い訳を並べていた。


「はぁ・・・・・・」



あまりにもしつこく着いて来るので、いい加減止めてもらおうと決めて、息を吐き出した瞬間に目の前にいた人物に驚いた。