夕方の街がざわついている。
否、正確には秀のまわりだけ。
普段から決して静かな街ではないが、人々が顔を見合わせこちらを見る。そしてよりいっそう騒がしくなる。なにも知らない人が今の秀の心の中を読むとしたらどう思うだろう。
ナルシストなやつ。とでも思われるだろうか。
絶対そうだな。
だが実際、騒がれているのだから仕方がない。
時折、そのざわついた方向へ顔を向け、ニコッと笑って手を振ってやるとキャーッと黄色い声がきこえてくる。正直物凄く面倒だったりする。何故この暑い中、ゆっくり歩いていて移動しなければならないのだ。
今は特に行かなければならない所は無い。ただ暇だからここを歩いている。今までは友人の家にいたがその友人が仕事だからと出て行ってしまったのだ。前の、秀が勝手知ったる家とは違い、新居で何がどこにあるか分からない。埒が明かないため外に出てきたのだ。せめてエアコンが動くのならそのまま家に居ただろうに。そう思いながら角を右に曲がる。
そうして本日何度目かの手を振ろうとしたとき、ポスッと胸のあたりに何かが当たった。
「あ、ごめん」
反射的にそう謝り、パッと胸のほうを見ると髪が肩ぐらいまであるおとなしそうな女子とその横に、腰近くあるくるくるとした髪の、こちらは外見おとなしそうとは言えない女子がいた。
そのロングの髪の子はじっと、何かを思い出そうとするように大きくパッチリとした目を細めて秀の方を見る。
「あ、もしかして・・・」
「あぁ、そうだよ木野秀」
「やっぱり!」
不機嫌に見えないよう努力をして笑顔を作って言って見るも、若干不機嫌さが声に残る。
やってしまったと思うも、質問をしてきた本人は、わずかながら不思議そうな顔をするがそんな事お構いなしといった様子だ。
「・・・?」
ずっとニコニコしているロングの髪の子はともかく、ショートの髪の子はなにがなんだかわからないといった様子。
「あ、雅知らない?今すごく人気の俳優で、歌手もやってる木野秀」
と、手を動かしながら秀のことを説明するロングの髪の子。
すると雅と呼ばれた子も手をなにやら動かし始めた。
凄く表情が豊かだと秀は思った。今まで見たことのないぐらいに。
「そっか、雅テレビ全然みないもんね」
先程と同じようにして喋るロングの髪の子。
というか、何故なにを言っているのかがわかったのだろうか。
彼女は手を動かしていただけだ。
理解するのに数秒かかった。
あぁ、耳が聞こえないのか。
どうしてわからなかったのだろうか、今のが手話だと。
それはたぶん今まで見たことが無かったからだろう。
だから、頭の隅では、耳が聞こえない人がいるとわかっていても、手話があるとわかっていてもすぐには出てこなかったのだ。
そして、興味本位で誘ってみた。
ぶつかったおわびも兼ねて一緒に食事をしないか、と。
「はい!是非ご一緒に!ね、雅」
そう聞かれた耳が聞こえない雅という子は苦笑いをして頷いていた。
否、正確には秀のまわりだけ。
普段から決して静かな街ではないが、人々が顔を見合わせこちらを見る。そしてよりいっそう騒がしくなる。なにも知らない人が今の秀の心の中を読むとしたらどう思うだろう。
ナルシストなやつ。とでも思われるだろうか。
絶対そうだな。
だが実際、騒がれているのだから仕方がない。
時折、そのざわついた方向へ顔を向け、ニコッと笑って手を振ってやるとキャーッと黄色い声がきこえてくる。正直物凄く面倒だったりする。何故この暑い中、ゆっくり歩いていて移動しなければならないのだ。
今は特に行かなければならない所は無い。ただ暇だからここを歩いている。今までは友人の家にいたがその友人が仕事だからと出て行ってしまったのだ。前の、秀が勝手知ったる家とは違い、新居で何がどこにあるか分からない。埒が明かないため外に出てきたのだ。せめてエアコンが動くのならそのまま家に居ただろうに。そう思いながら角を右に曲がる。
そうして本日何度目かの手を振ろうとしたとき、ポスッと胸のあたりに何かが当たった。
「あ、ごめん」
反射的にそう謝り、パッと胸のほうを見ると髪が肩ぐらいまであるおとなしそうな女子とその横に、腰近くあるくるくるとした髪の、こちらは外見おとなしそうとは言えない女子がいた。
そのロングの髪の子はじっと、何かを思い出そうとするように大きくパッチリとした目を細めて秀の方を見る。
「あ、もしかして・・・」
「あぁ、そうだよ木野秀」
「やっぱり!」
不機嫌に見えないよう努力をして笑顔を作って言って見るも、若干不機嫌さが声に残る。
やってしまったと思うも、質問をしてきた本人は、わずかながら不思議そうな顔をするがそんな事お構いなしといった様子だ。
「・・・?」
ずっとニコニコしているロングの髪の子はともかく、ショートの髪の子はなにがなんだかわからないといった様子。
「あ、雅知らない?今すごく人気の俳優で、歌手もやってる木野秀」
と、手を動かしながら秀のことを説明するロングの髪の子。
すると雅と呼ばれた子も手をなにやら動かし始めた。
凄く表情が豊かだと秀は思った。今まで見たことのないぐらいに。
「そっか、雅テレビ全然みないもんね」
先程と同じようにして喋るロングの髪の子。
というか、何故なにを言っているのかがわかったのだろうか。
彼女は手を動かしていただけだ。
理解するのに数秒かかった。
あぁ、耳が聞こえないのか。
どうしてわからなかったのだろうか、今のが手話だと。
それはたぶん今まで見たことが無かったからだろう。
だから、頭の隅では、耳が聞こえない人がいるとわかっていても、手話があるとわかっていてもすぐには出てこなかったのだ。
そして、興味本位で誘ってみた。
ぶつかったおわびも兼ねて一緒に食事をしないか、と。
「はい!是非ご一緒に!ね、雅」
そう聞かれた耳が聞こえない雅という子は苦笑いをして頷いていた。