駅のホームにも浴衣姿の人がちらほら。


なんだか私たちのこと見られてる気もする。
浴衣…なんか変かな?崩れてないかな?


「あの浴衣の人、かっこいいよね!隣の人、彼女かな。羨ましい〜!」
「私もあんな彼氏と花火見に行きたい!」

そんな会話が聞こえた。

え、旬さんのこと…かな?

たしかに…かっこいい…もん。


「未玖、乗るぞ。」

「あ、はい!」

電車が来たことに気付いてなかった。

電車の中は花火大会に行きそうな人がいっぱいで、混雑していた。

浴衣…崩れないかな。

ーぐいっ…


「あ…」

「ここだったら安心だろ。」

旬さんがドアの近くのスペースに私を引っ張ってくれた。

「……はい。」

だけど、混雑してるせいで、私の顔の上に、旬さんの顔が。

近い。近いよ!!


ガタン…

「あ。」

少し激しく揺れ、乗ってる人もガタンとなる。

ポスッ

「電車もやっぱり混んでるな〜。帰り大丈夫かな。」

そう言いながらも私のことを支えてくれる旬さん。
私は旬さんに抱きつく形になってる。

「あ、す、すいません…」

「大丈夫。これ以上動けないし。俺に掴まっといて。」

「はい…。」

私は旬さんの浴衣を少し掴む。



もうすでに、ドキドキがすごいよ…。



私の頭の上に、旬さんの顔があるから、上を向けない。




「未玖は何か食べてきた?」

「え。いや…何も食べて…きてないです。」

この距離で話されると、ドキドキが止まらなくなる。


「じゃあ…着いたら何か買って、場所確保しよ。」

「はい。」