琴葉がカップを置く。

「ごちそうさまでしたー!!」

元気一杯に放たれた言葉に、咲滝が目を白黒させる。

「もう飲んだのか?」

「はいー!!」

ぶいっ、とピースを作って笑う琴葉。

確かにさっきの飲み方では喫茶店のココアくらい一瞬かもしれない。

とにかく満足した風の琴葉に咲滝もどこか納得する。

琴葉は

「んー」

と伸びをした後で

「早いかもだけど、そろそろ帰りますね?」

と首をかしげた。

咲滝は頷いて、カウンターから出ると

「オッケ」

と椅子を引いた。

そのまま外へのドアを開ける。

「じゃあ、ありがとーございましたっ」

とニッコリ笑って出ようとした琴葉は、しかし直前で足を止めた。

「あの、また来たい、です!」

咲滝を見上げてそう言うと、

「俺もまた会いたいっす」

と笑って言う咲滝。

それでも中々足を踏み出そうとしない琴葉に、ふ、と微笑すると

「暇な時にでもまた寄ってってくれな!」

と頭に手を置いた。

そのままグリグリと撫で、離す。

琴葉もそれで吹っ切れたらしい。

「うん、ありがとう!またねっ」

と笑顔を残すと外に出た。

それを見送ってから、室内に戻る。

「さて…店仕舞いするか。

可愛い客でラッキーだったなー」

伸びをしてヘラっと笑うと、ドアの外に『close』と看板を掛ける。

そして自分の身支度を済ませると、外に出た。

後ろ手にドアを閉めると、聞きなれたベルが鳴る。

カランコロン。