「いやいや、可愛いーっすよ」

咲滝は琴葉のオーバーアクションに笑い、ニコニコと笑みを絶やさずに言った。

手元では何かを動かしている。

「私が可愛かったら、世界が滅亡しちゃいます。」

むぅ、と むくれた琴葉。

咲滝は相変わらず手元で何かしながら

「アンタを可愛いって言わないんなら、この世に可愛い女なんか居ないんだろ?」

と軽く言った。

それからパッと顔を上げ、琴葉と目を合わせると

「ん、問題なくカワイイから大丈夫!」

親指を立ててハハッ、と笑った。

その笑顔に琴葉も落ち着いたようだ。

言い返すのを止めると、

「ココア…飲みたいです。」

と嬉しそうな笑顔で言う。

それを聞くと、咲滝はすぐに完成したココアを差し出した。

「ハイ。飲んでみて?」

「あれ…早い、ですね?」

首をかしげた琴葉。

咲滝が何気なく

「ああ。さっきから作ってたから」

と頷くと目をパチクリさせた。

「ほえぇ…あ、でも良い匂い…♪」

関心はココアに移ったようだ。

そっ、とカップを持ち上げた所で、その甘い匂いに我慢が出来なくなったのか。

ゴクゴクッ、と勢いよく飲むと

「ぷはー。美味しいです!」

と笑顔を見せた。

飲み下し音といい、その豪快さは風呂上がりの中年男性のよう。

咲滝はそれに満足したようで、

「そっか。そりゃ良かった!」

とカラカラ笑った。

しばらくはココアに夢中な相手の飲みっぷりを面白そうに眺めていた。