目の前に置かれたコップをすぐに取る宗太。

「いただきまーす…」

と言うが早いか、速攻で口に含んだ。

ごく、と喉を動かして顔を上げる。

「凄く美味しいです!」

素直そうな笑顔を浮かべる宗太に

「お気に召した?良かった」

と微笑を返す咲夜。

そのまま、宗太は数口レモンティーを飲んでいたが、やがてメニューの近くに目を留めた。

「さっき言ってた

『百合子ちゃん』

…って、この人ですか?」

と指を指す。

咲夜が覗き込むと、それはメニューの表紙裏になっている従業員写真だった。

「優しそうな人ですね」

宗太の言葉に破顔する咲夜。

「そうそう。

凄く優しくて良い子なのよ♪

お料理も上手だしねー」

身内を褒められると素直に嬉しい性質らしい。

極上の笑顔を覗かせた。

咲夜がカウンターを覗き込んでいるため、至近距離。

しかもそんな笑顔を垣間見せられ、思わず言葉に詰まった宗太。

「え、えっと…咲夜さん、は、お料理しないんですか?」

と若干しどろもどろになりつつも会話を続けた。

自分の話題に移ったため、咲夜は体を上げる。

「んー、出来なくはない、って感じかしらね」

視線を泳がせ、少し思い出すような素振り。

ふふ、と苦笑して宗太に目線を戻すと

「やっぱり身近に百合子ちゃんみたいに上手な子が居るとね。

つい任せちゃうのよ」

と肩を竦めた。

「そんなもんですか…」

宗太の相槌を受け、

「いっそ手料理を振る舞う関係の男のひとでも居たら良いのかしらね?」

などと思いついたままを言葉にする。