「えっと…

じゃあレモンティーで!」

やがて心を決めて顔を上げ、進路相談でもしているかのような真顔で注文する宗太。

「はい♪」

相変わらずそれを見てニコニコと微笑むと

「ちょっと待っててね…?」

と手元でレモンティーを作り出す咲夜。

「はーい!」

と元気のいい返事をする宗太。

ばさばさと長い睫毛を下向けて作業する咲夜をチラチラと見ている。

「レモンティー、好き?」

視線を下げて作業を続けながら宗太に話しかける咲夜。

流石¨talk cafe¨の店員、とでも言うところなのだろう。

客に対して常にタメ口というのは店員にあるまじき行為だったりしないのか。

しかし宗太は気にした風も無く

「大好きです!」

と屈託無く笑った。

「そうなのねー。

私も好きよ、よく他の店員に作って貰うの」

「そうなんですか?」

咲夜が相槌ると、宗太は興味津々、とでもいう様子で身を乗り出した。

この店の店員に興味が有るのか、それとも咲夜の日常にか。

「ええ。百合子ちゃんのなんか絶品でね…♪」

客の前でありながら、以前飲んだレモンティーを思い出して恍惚の表情を浮かべる咲夜。

宗太はそんな相手を眺めてニコニコと笑った。

豪気なのかもしれないし、案外共通点が見つかったと喜んでいるだけかもしれなかった。

そうこうしている間にレモンティーは完成したらしい。

「…うん、ok. 

はいどうぞ♪」

相手の目の前のカウンターにコトリとカップを置く。

因みにこの店は全てカウンター席だ。

椅子も普段は1つしか置いておらず、2人以上で連れだって客が来たらその都度席を出している。

一度に2グループ以上の入店は認めないと言うから、文句なしに

『話し相手専門店』

というコンセプトを頑固なまでに適用した、店なりの拘りなのだ。