試合が始まった。


対戦校は有村高校だ。
去年の夏の大会も
同じ対戦校らしい。


先発は冨樫くんだった。



辺りには
キャッチーミットに
ボールが収まる音が
響いていた。







「いい音…。結構前に…聞いたことが」
「帆乃香‼︎思い出したの⁈」
「ううん、でも。この音……」
「聞いたことあるの?」
「うん…。結構前だけど…」



一回表はバッター3人とも
三振で終わる。

続いて一回ウラ。

私たちの高校の攻撃だ。


今日は打線も守りもいい。



一回ウラで5点を入れた。






それから点差が
ひっくり返ったりすることはなく…

七回ウラ。




バッターは冨樫くんだ。



(あと、もう少し……。何か思い出せないことがある…)

それは野球に関すること。
彼のピッチングが評価されたことで
レギュラーに入っている。









ずっとそう思ってた。


















記憶を取り戻すまでは。















(カッキーン











いい音だ。














そうだよ。
この音だよ。
陽斗がホームランを打つ音。











そして、こっちに向ける笑顔。














それは
私の愛する人の笑顔だった。












大好きでやまない人の笑顔だ。











七回ウラ。
2ストライク2アウト満塁。












さすがだよ。陽斗。
















「満塁ホームランだ‼︎」
胡桃がはしゃぐ。









私は全部知ってるよ。


この野球少年は……



















「私の大好きな人だから…」