帆乃香の泣いている姿を
こんなにも多く見てしまうのは
俺のせいなのか…?



だと言っても、
帆乃香から別れを告げられた。




なぜそんなに泣く必要があるのか…。







「冨樫‼︎」
急に三吉先輩が教室に入ってきた。


「み、三吉先輩…」
「帆乃香ちゃんに…」
「ぇ…?」








俺はそのとき、
三吉先輩が怒っているのを初めて見た。
いや、怒っているんじゃないだろう。

真剣なんだろう。

ただ、なんで帆乃香が
絡んでくるのかわからなかった。



「帆乃香ちゃんになにしたんだよ‼︎」
「べつに…」




べつに。
その言葉が口から出たのは
なぜなのか。










付き合ってるのなんて嘘。
うざいのも嘘。














本当は帆乃香に振られてからも
ずっと好きだった。
もちろん、今も好きだ。











だけど、感情をうまくコントロールできなくて、今の状態になっている。












【鳥羽家の執事】としてじゃなく
【帆乃香の彼氏】として
帆乃香を守ってあげたい。
何があっても守りたい。














ただ、今の俺じゃ
何もできない。
帆乃香にあんなこと言って、









「別にってなんだよ…‼︎」
「ぇ…」
「帆乃香にとって…お前は特別なんだよ…。早く気づいてあげろよ‼︎あんなに苦しんでんだぞ‼︎」




その言葉を聞いて
全ては俺のせいだと思った。











近くにいたのに、
何も気づかなかった。
俺のせいで
たくさん傷ついて
たくさん泣いて
たくさん誤魔化して。














特別な存在になるのは
俺じゃふさわしくない





三吉先輩にそう言われて…。










「み、よし…先輩…」




すろと、三吉先輩の後ろに立っていたのは泣きはらした目でこっちを見る
帆乃香がいた。










帆乃香は…。
今、どんなことを
思っているんだろうか。





















ごめんな、帆乃香。
俺じゃ幸せにできない。
俺じゃ守ってやれない。











【帆乃香の特別な存在】には
相応しくない。









ただ、一つだけ伝えたい。


























「俺は帆乃香が好きだっ」
心の中で呟いたはずの言葉は
口で呟いていた。














また伝えたいんだ。
好きだって。
誰よりも愛してるんだって。