私たちがグラウンドに着くと
もうすでに、練習が始まっていた。


アップを終えた部員たちは
各学年に分かれて練習をしている。


(あ、れ……?陽斗が一年生のところにいない……。なんで…)

「あ、帆乃香…、私、生徒会の仕事があって…、これから練習出られないんだ」
「そ、そうなんですか…」
「それでね、もうすぐ夏の大会の予選だから、監督からレギュラーメンバーとベンチメンバーの名簿もらったの」
「は、はぁ…」
「私が来れない時、基本的には翔太がやってくれるけど…、いろいろがんばってくれるとうれしいな」

そう言ってニコッと遥香先輩が笑う。

「はい、これ、名簿」
「あ、ありがとうございます」

遥香先輩から名簿を渡された。

「今から行かないといけないし、あとはよろしくね!」


そう言って遥香先輩は
校内に入って行く。

(遥香先輩も大変だなぁ…)

私はベンチに座って
練習風景を、眺めていた。

やっぱり陽斗は
一年生のところにいない。

(なんで…)

「おーい、冨樫‼︎」
翔太先輩が、そう呼ぶ。

「は、はい‼︎」
元気良く返事を…している。

翔太先輩と何かを話している。

私は渡された
名簿を見た。

上から順番に見る。

すると…

1年生のところに
一つだけ名前が書いてあった。

「ぇ……」

そこに書いてあったのは…

【背番号1:冨樫陽斗(ピッチャー)】


「う、そ…。一年生で…レギュラーメンバー」

私は驚く。
本当にすごいんだなと。
そう思った。

(ぱんっ

響く快音。
キャッチャーミットに
しっかりボールがあった。

「ナイスボール!」
今のは勝負球。
直球ど真ん中だ。

キャッチャーが陽斗にボールを返す。

「あんな真剣な姿…」

私はまた知らない陽斗を見た。


「すごくかっこいい…」



夏の大会予選まで…
あと2週間。

絶対に夢の聖地に行く。


陽斗なら必ず連れて行ってくれるって
信じてるからね…。