「お嬢様…」
だれかが私を呼んでる。


「私は、もう…行きますね…」
大好きな声。
それでも…なぜか切ない声。

「さようなら…」

その時、私は現実に戻る。
私は庭のベンチで寝ていたようだ。
あの、結城の声。

「ゆ、夢だったんだ…」

私は起き上がった。

「はぁ…はぁ…」
誰かの息切れ。

「まさか…」
私は結城の元に駆け寄る。

「結城⁉︎」
「お、じょう…さ、ま…はぁ…はぁ…」

苦しそうだ。

「結城!しっかりしてよ…!」
「す、み、ません…。こんなんじゃ…執事…し、っか…く…です…ね…はぁ…」
苦笑した結城の顔は
とても苦しそうだ。

「失格だなんて、そんなことない‼︎」

私は声を張り上げて言う。

でも…

「いや、失格だ」

後ろから降りかかるのは
冷たい声だった。

振り返る。
そこに立っていたのは…


「お、とう…さ、ま…」
「帆乃香、ただいま。中に入ろうか」
「ゆ、結城は…」
「連れて行く。彼の部屋に先に行っておくれ」
「うん……」

私は結城の部屋に行く。
お父様は結城を抱え部屋に入ってきた。
そして、結城をベッドに寝かせる。

「すみません……」
「べつにいい」

父の声はどこか冷たく、
結城の声は悲しそうだった。


「大丈夫…?」
「はい…」

結城は目を合わせてくれない。
なんでだろう。

「それにしても…」
「……っ」
「自分の体調を管理できないのは困る」
「申し訳ございません、旦那さま」
「これから、帆乃香を任せられない」

父の冷たい声が飛んだ。

結城はきょとんとしている。

私はその意味をしっかり理解できた。

(クビにされちゃう……)

「ど、どういうことでございますか」
「クビにするということだ」
またその声が響く。


「な、なぜです‼︎私はまだ……」
「これは命令だ」
「旦那…さま‼︎」

(もう、会えなくなる。毎日会いたい…!)


そう思った私は結城の前に出て言った。

「お父様やめて‼︎」
「なぜこいつを庇う?」
「私は…結城をクビにして欲しくない!」
「お嬢様…」
「なぜだ、何故そんなことを。こいつに守る権利などないんだぞ⁈」
「…いいのよ、守ってもらいたいの!」

私は涙を流してお父様に言う。

こんな状況で言うのは…
とか、ちょっとためらったけど。

もちろん、結城に聞こえる声だ。

大好きだからそれくらい許して欲しい。










ねぇ、結城。
私の言葉は、しっかり
あなたに届きましたか?




























______「お父様、私は結城が好き…」