__家に着いた。


私は急いで結城の部屋に入る。


(コンコンっ

ノックをしても返事はない。
寝ているのだろう。



私はそっとドアを開けた。


私が思っているとおり、
結城は眠っていた。


結城の様子を伺う。


「可愛い寝顔しちゃって…」
わたしは微笑した。
可愛くて仕方がなかったのだ。

思わずキュンとするような
そんな寝顔だったのだ。


それにしても、
昨日、倒れてたから…
少し部屋が散らかっている。


私は片付けようと
クローゼットの方を振り返ると…



「ぇ…」
私の目に映ったのは
鳴澄河高校の男子用の制服だった。

ブレザーは床に落ちていた。


私は少しの不安を覚える。



(なんで…鳴澄河の…。ま、まさか…冨樫くん…って……結城のこと……?)


私がそう思うのも、仕方ないだろう。


だって
何もかも似ているのだから。
そんな人物滅多にいない。
むしろ、いないかもしれない。


だから、そう考えるしかなかった。


制服の件はとりあえず後にして
私は部屋を片付けた。


片付けを終えた後、
床に落ちていたブレザーに手を付ける。


その時バサッと何かが落ちた。

「ん…?」

生徒手帳だった。
これで誰かわかってしまう。

そんな不安もあったけど…
私は1ページ目を開く。


「ぇ……」
ゴクリと息を飲む。


そこに書いてある名前。



_____『冨樫 陽斗』



私は少し戸惑う。
少しばかりではないだろう。
もう、何もかも
わかっていない状態なんだろう。

私は怖くなって、
ブレザーのポケットに
生徒手帳を入れ、
ハンガーにかける。


その時…

「お、じょう……さ、ま…?」

結城の声にビクリとする。

(今起きちゃ……だめ…)

そんなことを思っていたのに、
それでも、結城は
起き上がっていた。


「……!お嬢様!」
少し驚いている声。
私がブレザーをハンガーにかけたまま
持っていたからだろう。

「ゆ、う……き…」
私の目の前は真っ暗になる。
……頭の中は真っ白になる。

「き、気にしないでください!」
そう言って、私の手から
強引にハンガーをとった。

「あなたは何者なの…」

つい、口から出てしまった心の声。

「た、ただの執事です…よ……?」

なんでだろう。
執事だってわかってるのに、
冨樫くんが結城だってわかった瞬間
怖いくらいに胸が痛くなった。
同時に溢れんばかりの涙が流れる。

私の知っている『冨樫くん』は
男子にも女子にもよく親しまれていた。
だれとでも平等に接していたし、
すごく楽しそうだ。
笑顔も結城に似ていて、
時々結城みたいに無邪気に笑う。
私は冨樫くんのその笑顔が好きだった。

でも、ある日。
他クラスの女子から
「冨樫くんが好きだから、仲のいい鳥羽さんに協力してほしい」

そう言われた。

簡単に了承は出来なかったけど、
私は渋々了承してしまった。

その時からだ。
冨樫くんを意識し始めた。
そんなに時間は経っていないのに、
結城と一緒にいた時間を
思い出してしまう時が多々あった。




___冨樫くんは、結城なんじゃないか。



その疑問が今、解決してしまった。





冨樫くんは、結城だった_________