胡桃が帰ってから、
私は鏡の前に立った。





「可愛くなれる……か」

そんな魔法が
いつか使えたら……
そんなことを思いながら、私は1人
ぼーっと立っていた。


すると…

「お嬢様。失礼します」

結城の声が聞こえた。
私はベッドに座り、
結城から顔が見えないように座る。


こんな赤い顔を見られたら…
また熱があるとかで
心配させてしまう……。

「は、入っていいわよ……」
少し声が震える。

(ガチャっ


扉の開く音。
そして、いつもの温かく優しい声。

「遅れてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいのよ…」
「少し、買い物を……」
「うん…」
「お嬢様…?」
「な、なに…?」
「なぜ、こっちを向いてくれないのですか……?」

その言葉にドキッとした。
もしかして、好意…?
とか、そんなこと思ってた。
でも、そんなことあるわけないって…。


「もしかして、怒っていらっしゃ……」
「おこってないっ‼︎」

そう言って、私は振り返る。
顔が赤くなっているのもわかってる。
ドキドキしてるのもわかってる。
だけど、今は心配かけたくない…。


「お嬢様…///」
結城の顔が赤く染まる。

そんなの、好意なわけないのに。
少しだけ期待した。


「……っ!」
私は目を逸らし、立った。

「に、似合わないでしょ……」
「そ、そんなことはございません」
「うそよ…」
「お嬢様……」

そう呼ばれ私は振り返る。

そこにあったのは
優しいそうに微笑む結城の姿だった。


「すごくお似合いです。私、見惚れてしまいました」

それをどんな気持ちで言った言葉か
私にはわからなかったけれど、
その言葉が…嬉しかった。


私の顔はどんどん赤くなる。


「…あ、ありがとう」

私も結城に向けてニコッと笑う。
結城の顔が赤くなった。


「で、でも、急にどうされたのですか」
「……胡桃が買ってくれたの」
「そうでございますか…」
「ええ。AngelSmilesで買ったのよ」
「え……」

結城は驚き、
結城が持っていたものが
落ちた。


「あ……」
結城が急いで拾おうとしていた時、
私が見た文字は






"AngelSmiles"だった。



「結城…そ、それ…」
「き、気にしないでください‼︎」
「え…でも…」
「……」

またあのむずむずが戻ってきた。
結城は私の方に近づく。




「お嬢様…」
「なに…」
「………かなり遅れてしまいましたが」

その袋を差し出してきた。

「お誕生日おめでとうございます」

それを言った後の
結城の笑顔に
私は見惚れてしまった。