「お嬢様…?なにをおっしゃって…」
「だから‼︎胡桃のとこに行きたかったら……」

その時、私の目尻から
熱いものが流れてきた。
涙が流れてきた。

「……感情的になってごめんなさい…」
「え、いや…」
「お幸せに…」

私はそう言って部屋から飛び出した。
そのまま、外に出ていった。


結城は追いかけてきてくれないのか。
私をほおっておくのか。
胡桃のところに行ってしまうのが
怖くて歩く時はフラフラだった。


私は家の近くの公園に行った。



そこに行ったら落ち着くと
そう思った。

「帆乃香?」
「…寿也くん…」
「そんな、ずぶ濡れになって…」
「……家出…」

寿也くんは私を傘に入れてくれた。

「……辛いよ…」
「うん……」
「もう…やだ…」


その時…


(ぎゅっ


寿也くんが
私を抱きしめた。


「と、寿也くん……?」
「…俺が守る」
「え…?」
「俺が帆乃香のこと守る」


初めて聞いた。
寿也くんはいつも優しい声だったのに。
今の声は…いつもより低かった。


「寿也くんが、守ってくれるの…?」
「うん…、必ず…」

寿也くんは
そう言ってもっと強く抱きしめた。


その時…


「お嬢様‼︎」

結城の声がした。
私は歩道の方を見ると…


「お嬢様…‼︎」

結城と目が合ってしまった。
私は目を逸らし、
寿也くんから離れた。


「帆乃香……?」
「ごめん、寿也くん…」
「え…?」
「守ってくれるのは、嬉しいよ。でも、ごめんね……」


私はそう言って
反対側の道路の方に向かった。