ーージリリリリ

目覚ましがなった。
ただいま8時30分。
2人きりの誕生日がスタート。

「お嬢様、失礼します」
結城がドアの向こうでそう言い、
中に入ってきた。

「おはようございます」
「おはよう」

私は挨拶を返した。

「…えと、今日はどこか出かけましょうか」
「……ぇ?」
「せっかくですし…いかがでしょう?
このまま屋敷にいても、することが…」
「そうね…。じゃあ、着替えるわ」
「はい、私も執事だとわからないように」
「うん…」

結城は私の返事を聞いてから
自室に向かった。

私は先日買ったばかりの
新しいワンピースを着た。
髪も久しぶりにくくり、
うっすらメイクをした。

部屋を出ると…

「お嬢様…」
結城がドアの横で待っていた。

「結城…」
結城は、普通に中学生男子が着そうな
服装で私を待っていた。

「お似合いでございます」
結城はニコッと笑った。

その笑顔に一瞬見惚れた。

なぜだろう。
この前からだ。
結城のことを意識して
見るようになったのは。

「あ、ありがとう…、ゆ、結城も似合ってるわね」
「ありがとうございます」

私は少しだけ浮き足立った。

「じゃあ、行きましょうか」
「そうね」
「あの、お嬢様。一つだけお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ」

「今日だけ、普通に話してもよろしいでしょうか?」
「もちろん!」

私はニコッと笑って
結城の手を握った。

「私からのお願いよ。
不安だから手を繋がせて…?」

私の一日のワガママが出てしまった。

「は、はい……」
結城の顔が少し赤くなったのは
気のせいだろうか。
顔が赤くなっているまま、
結城は私の手を握ってくれた。

頼もしく、強く、それでも、優しく
手を握ってくれたのだった。