陽斗が日本に帰ってくる2週間前。
私は海宮高校から転校してきた
ある男の子に恋をしていた。


それは、千陽の幼馴染の
間宮 悠斗(まみや ゆうと)くんだった。

悠斗くんは、優しくて、
性格が良くて、野球が上手で
陽斗に似ている男の子だ。


春季大会。
悠斗くんは、ピッチャーとして投げた。


本職はショートなのに、
ピッチャーやキャッチャーもできる。


なんてかっこいいのだろうか…。


陽斗を忘れる機会だったし、
次の恋に向かおうと思った。


なのに、陽斗が帰ってきた。



頭の中は真っ白で…。



でも、悠斗くんの家は私の部屋の隣。
正直すごく嬉しかった。




でも、今、この状態で来られるのは…
さすがにいやだ…



でも…


(ぴんぽーん!


家のチャイムが鳴る。
動けない…。
鍵はあいてるまま…。


どうしよ…



そんなとき…




(ガチャっ



ドアがあく。


「帆乃香‼︎」
悠斗くんの声…。

「帆乃香⁉︎だいじょぶか‼︎⁉︎」
私は頷いて見せた。
おそらく、全然そうは見えないだろう。

悠斗くんが私のおでこに手を当てる。

「高熱やないか‼︎こんな状態で学校行ってたん⁈‼︎」
「うん…」
「しゃべるな…。とりあえず、寝んとあかへんやろ‼︎」


こんなに必死になってくれるのは、
悠斗くんか陽斗くらいだけだ。


悠斗くんは
私を抱えてベッドに寝かせた。

「熱下がるまで俺泊まるけどええか⁇」

あまり聞き取れなかったけど、
私は頷いた。

「ほんなら、ちょい待ってや」

悠斗くんはそう言って一回自分の部屋に戻った。

そしてまた戻ってくる。








なんでそんなに優しいの?










陽斗とは少し違う優しさ。











私は悠斗くんに恋をした。
新しい恋を、した。










ごめん、陽斗。
でも、あなたには千陽がいるじゃない。










千陽を幸せにしてあげて。

















それが私の囁かな願いだった