「あのね、深瀬。確かに見た目は大事だし、私だって太ってる自分が嫌になる時あるよ。でもやっぱ大事なのは中身なんだよ。辛いことをゴムみたいに跳ねかえせる柔軟さが、人って大事なんだよ。負の感情にとらわれてちゃダメ。……お願いだからさ、涼花と藤崎を邪魔しないでやってよ」


「……でも私、洸ちゃんのこと諦めきれないの。こうして叶わない恋をすることは負の感情にとらわれてるってことなの? 私、どうしたら良いの?」


「好きでいることは悪くない。悪いのは、深瀬が今心から好きなことして笑ってないってこと。本当は2人の邪魔なんかしたくないんでしょ? 本当は自分がどうしたいのか、自分に聞いてみなよ」






相沢さんの話を聞きながら、深瀬さんは、ポロポロと床に向かって涙を零した。





私も玉川君も2人の話を黙って聞くことしか出来ないけど。





相沢さんのことをもっと好きになったこの気持ちも同じだと思う。





玉川君、相沢さんに惚れ直しちゃったりして……。





だとしたら、相沢さんは喜ぶかな。






「私は……洸ちゃんと付き合いたいけど……ムリって分かってる。から、諦めたい。本当は諦めたくないけど、もう諦めたい。疲れた……」


「よし! じゃあ銭湯にでも行って疲れを癒すか!」






ガバッと深瀬さんの肩を抱いて、学校鞄を肩に担いだ相沢さんに、深瀬さんは黙って頷いた。





(相沢さん、男前……)