「ありがとう、玉川君……」


「別にー。授業サボれてラッキーだな!」




(ラッキーではないけど……。洸ちゃんが倒れたんだし)






少し複雑な気持ちで振り向くと、玉川君は私を見て笑っていた。





いつも能天気だな。玉川君は。



そう思って教室の中に戻ろうとしたのも束の間。








「見た?今の!頭触ったよね!? 皆さん!玉川青児は、橘さんと浮気してます!」





誰かが急に廊下に響くぐらい大きな声でそう言った。





(え?浮気って……え?)





誰が言ったんだろう。玉川君とって。……というか、洸ちゃんがいるのに浮気なんてするわけないじゃん!!





けど、今の声ってまさか……。





不安になりながら教室の方へ視線を向けると、やっぱり予想は的中した。






「橘さんも太った彼氏より、かっこいい玉川君の方が良いんだってー」





私はその言葉を呆然と聞いた。





言っている張本人の相沢さんは、そんな私と目が合うと冷たく笑った。