あの日藤崎君とキスしなかったら、深瀬さんからこんな事を言われなかったのかもしれない。







「……深瀬さん、ごめ」


「良い子ぶらなくて良いし、私に気使わなくて良いよ? 私も本気出させて貰うから」








そのまま何も言えずに立ち尽くす私に向かって、深瀬さんは「じゃあ」と背中を向け立ち去ろうとする。


まさか自分の後ろで燃え盛る炎のようなオーラを煮えたぎらせた相沢さんが、





「アンタは明智光秀みたいな? 織田信長にケンカ売ってただで済むと思うんじゃねーぞ?」







腰から刀を抜こうとしている侍のように、傘を持って腰を低くした状態で構えていると気づくまでは。