* * *

翌日。放課後の下駄箱で、私の事をある人が待っていた。




「橘さん、久しぶり」





それは、深瀬さん……。

肩まであった髪を顎の下ぐらいまでバッサリ切っている。それに少し痩せた気もするし、藤崎君に失恋したせい……?




こうして話すのは廊下で話した日以来だから、どう接して良いのかわからない。





「久しぶりだね……」


「どう? 髪切ったの。似合うかな?」


「うん、深瀬さん短いのも似合うね」






控えめに笑うと、深瀬さんもいつもより大人しめに口角を上げているように見えた。





(そういえば、図書室で本をぶつけてきたのは深瀬さんだって藤崎君が言ってたっけ……まさかね……)






「ありがとう。あのね、今日は橘さんに話があるんだ。……藤崎君と、……付き合って良いよ」


「えっ? どうしたの? いきなり」


「暫く考えて吹っ切れたっていうか、自分勝手にしてても恋愛が上手くいくどころか失敗しちゃうって思ったから。……藤崎君と橘さんの事、心から祝福するよ、私。おめでとう」






今度は普段と同じ可愛らしい笑顔で微笑まれつつ両手を握られると、私はじんわりと涙が出てくる。