「昨日私を傷つけない為に話さなかったんでしょ？ばかやろう！水くせえだろうが！言ってくれよ！」


「ごめんなさいぃぃぃ。だって、自分の彼氏が本当は自分のおねえさんの事が好きなんて言えないよぉぉぉ」


「涼花……！マジBestFriend……！A、I、SI、TE、RU……！」






耳元で相沢さんの発音良い日本語が聞こえてくると、私もぎゅっと抱きしめ返しながら何度も頷く。






心なしか鼻水を啜る音が聞こえてくるから、相沢さんも泣いてるんだろう。





(良かった……これで仲直り出来た……)





それだけが本当に嬉しくて、玉川君の事なんて忘れていた。






「青ちゃん、逃げんじゃねーぞ？」






耳元で聞こえる声が二トーンぐらい低くなった事に気づくと、やっと思い出す。





男声のテノール歌手のような声で、相沢さんは教室にこそこそと入っていく玉川君の方を睨みながら続けて言った。







「涼花と付き合ってるだあ？私のねえちゃんが本当は好きだあ？てめえ……」



「優希、それ以上は言うな……！」






そしてビクッとして慌て始める玉川君に向かって走り出すと、飛び蹴りしながら叫んだ。






「私にねえちゃんなんていねえだろうがぁぁぁ！！」