それは、
私の軽い一言がはじまりだった。







「彼氏にするなら太ってる人って嫌じゃない？涼花もそう思わない？」


「うん、そうだね〜」






季節は、梅雨の雨が酷く降る頃。




場所は2-Aと表札がかけられた教室。





今は二限目の休み時間で、生徒達がそれぞれ仲が良い人同士集まって、楽しそうにお喋りなんかしている。






自分の席に座って、前の席の友人と話していた私もその一人。





橘 涼花(たちばな りょうか)。十七歳。






肩まで伸びたストレートの黒髪に、お世辞でも美人とは言えないごく平凡な顔立ち。





背は高くもなく、低くもない。




体型は、どちらかというと痩せ型。







そんな私がまさかこの時、友人との会話で平凡だった高校生活を狂わせる事になるなんて思ってもいなかった。







机の横に一人の男子生徒が仁王立ちしている事に気づくと、ふと顔を上げた。









「は？ 何偉そうな事言ってんだよ！付き合う事に外見なんて関係ねーだろうが！」








この男子生徒の名前は、玉川青児(たまかわせいじ)。





私のクラスメイトで、髪は生徒指導に引っかからないぐらいギリギリに茶色く染め、緩くパーマもかけていて、学年だけじゃなく全校の中で目立つ。






その上顔は整っていて、爽やか系なルックス。






背も高く、スタイルが良い為女子からもモテる。




でも私は地味に苦手……。