「そろそろ行くか」
蓮は立ち上がって手を差し伸べてきた。
その手を取って立ち上がる。
強い気持ちが怖さに負けないようにがんばらなくちゃ。
「手、貸して」
黙って差し出すと、ペンで何かを書き始めた。
見ると、二重に書かれた四角の中に縦に一本線が入っている。
「過去に行けるのは、一回だけだからな」
「それと……お前のこと、嫌いじゃなかった」
少し笑って背中を押された。
「早く行け!皆にはなんとかごまかしておくから」
「ごまかしで効くのかな」
「心配するな。早く行け」
フェンスの向こう側に立つ。
「大丈夫かな。あたし」
「止めるか」
「止めない!絶対、瑞樹を助ける」
蓮もあたしの隣に来てくれて見てくれていた。
「ありがとな」
そう言われると、心の準備もまだなのにいきなり背中を押されて、あたしは、この世界を飛び出した。