「皆の中から、篠田依來の記憶が消される。だから、おばさんも、自分の家には子供がいない訳になるし、瑞樹だってお前と過ごしてきた日々を忘れることになる」
「大丈夫。瑞樹のために、この命を捧げます」
そう聞いた蓮は、何度も何度もうなずいてくれた。
「それと、未来から来たことは誰にも話しちゃいけない」
「うん」
何時間もこうしてフェンスに寄りかかって同じ景色を二人で眺めている。
あたしたちが三人で遊んだ町。
今から無くしたカケラを探しに行くんだ。
少しわくわくする。
それと同時に本当に過去に行けるのか不安でもある。
蓮が未来から来た人だなんて信じたあたしもバカだけど、正直に話してくれた蓮もバカだと思う。
「知ってたか?瑞樹ってな、7月いっぱいで留学する予定だったんだ」
留学?
そんな言葉、全然聞いていなかった。
「そんな顔するってことは、聞いてなかったんだな」
やっぱり、瑞樹のことは何も知らなかった。
どうして言ってくれなかったんだろう。
あたし、ちゃんと応援してたのに。
行ってきなよ、って言ったのに。