「それよりさ」


蓮が自転車を止めて振り返った。


 「依來がいつも食ってるソーダ味の新種が発売されてるって」
 「ホントに!?行く!」
 「後ろ乗れよ」


自転車をバックしてあたしの前で止めた。


乗ろうと自転車に近づいた時、一瞬瑞樹の顔が視界に入った。


心臓がドキッとはねて乗るのをためらった。


 「どっちが速いか勝負な」


瑞樹がかばんを私に持たせて坂を走って下りていく。


悪いことしちゃったかも…


 「早く乗れ」
 「うん…」


そんなことを知らない蓮は速く乗れとあたしをせかしてくる。


仕方なく後ろのタイヤの横の部分に足を乗せ、自転車はスピードを加速させた。


強く握りしめる蓮のシャツ。


好きなのは、愛することは、ただ瑞樹に見つめてもらうだけでいい。


話をするだけでいい。


胸がいっぱいになる。


だけどあたしのせいで瑞樹が悲しい顔をするのは


胸が痛くなる。


ため息が出る。


涙が出そうになる。