その道中、おれは男の名前を聞いた。

彼の名はナズ。


「何かあったら俺に言えよ。できる範囲なら助けてやる。」


とナズは言い残し、途中で別れた。

彼の後姿を見送り、帰ろうと踵を返した時、丁度右側に薄暗く細い廊下がある事に気が付いた。
朱で塗られたそこは橋の様になっており、両端から覗けば1階まで吹き抜けている。

当然なにかしらの秘密の通路に見えて仕方がなくなってしまったおれの好奇心は、お陰で程よく掻きたてられ、少しだけならという安易な考えが無情にも心拍数を多くする。

ああ、このまま好奇心に任せ行ってみるか、それとも神の間に戻るか…。


「…………。」


散々悩んだ挙句、おれはその細い廊下に足を置いた。



廊下は思ったよりも長く、歩く度にギシギシと床が物騒な音を立てる。

直ぐに見えてきた突き当りには漆黒で塗られた扉があり…


おれは躊躇うことなく扉を押した。