「あー立ち疲れたわ~向こうで休んでていい?食べ終わったら帰ってね」
龍からは ちゃんとした答えが得られそうに無いと踏んだ麻理子は
諦めて早々に居間へ向かった。
ソファーの上にゴロンともたれ掛かると、片足を上げて、ふくらはぎを揉み始めた。

龍はそんな麻理子の仕草を横目でチラチラと見ながら食べ続けた。
卵とじとご飯を交互に食べ進めて最後はご飯だけになったが、最後の一粒まで
美味しそうに食べている。
「ごちそうさまでした」
独り言のようにポツリと呟くと、食器を流しへ持って行って水をかけた。
「麻理子ちゃ・・・」
居間へ歩み寄ると、 耳掻きに集中している麻理子がいた。
余りに必死な表情で 言葉をかけるのも悪い感じがする。

「おっし とれたー!」
晴れ晴れとした顔で耳掻きの小さな返し部分に溜まった耳くそを眺める麻理子。
ようやく龍が近くに立っていることに気付いた。
「あ、食べ終わった?じゃぁ、気をつけてかえ・・・」
麻理子がを返そうとしているのに気付いてか、
言葉をさえぎって・・
「あーーーー! 俺も耳かゆっ かゆい!」
「・・・・え?」
麻理子の膝の前まで行くと、片手で「どいてどいて」の仕草をして麻理子をソファーの右端へ誘導する龍。
すかさずゴロンとソファーに寝転がり、麻理子の膝に頭を乗せた。

「ちょっ 龍くん!」
「痒いんだって! ついでに俺のもやってよ。痒くてバイク運転できないよ。」
そう言うと気持ち良さそうに顔を膝の方へ向ける龍。
その可愛い仕草に また何も言えなくなる麻理子だった。
「ここ? カサカサッていう?」
「うん・・あ、もうちょっと深く・・・」
「痛くない?」
「あっつ・・・・ちょっとこわーい」
「ふふっ・・・あはっはははは」
「ちょっ・・耳かきながら笑うなよっこわいだろー」
「ごめっ・・・だってぇ可愛いんだもんっ クックッ ン・・・フッハハハハ・・クスクス」
麻理子は耳かきをやめて顔を背けてまで笑い続けている。
お腹が小刻みに揺れるのを後頭部で感じながら 龍も口元がゆるんできた。