その声で更衣室に残っていた女性社員達が 麻理子のロッカーのある角まで近づいて、こちらを伺っている。

「石川さん?・・・・あのね、これは命令よ。龍とは口を利かないで、もちろん寺山さんともね」
「あ・・あのっ 向こうから話しかけられたらどうしたら?」

コツコツコツ・・・・
夕子はロッカーが途切れる所まで歩くと振り向かずに
「そんなの適当にかわしなさい」
とだけ言って、そのまま振り向かずに更衣室を出て行った。

麻理子はブラウスの閉め忘れた残りのボタンをかけて、
今あったことを忘れようとしていた。
すると、更衣室に残っていた女性達も自分のロッカーのある、場所まで戻って、
内緒話をしているようだった。
その声は麻理子にもはっきりと聞き取れるほどで、嫌でも耳に入ってきた。
「まだやってんだ・・・夕子。」
「何?」
「いやね、私夕子と高校同じだったのよぉ」
「あーそう言ってたねぇ」
「でね、夕子ってば、自分の気に入った男がいると
いつもあぁやって関わるなって脅してたわけ」
「あらやだぁーこわーい」
「彼女の忠告を無視して横取りした女がどうなったか・・・・」
「キャー興味あるー!」
「ボソボソボソ・・・・・」
「うわっ悲惨ねー」
「あー・・寺山さん、狙ってたのになぁー」
「諦めよ諦めよ」

肝心の所だけは完璧にヒソヒソ声で話しながら彼女達は笑って更衣室を出て行った。