「やぁ、 石川さん・・・だよね?」
女性社員一同、麻理子と寺山の顔を交互に見る。
と、同時に他の男性社員達も麻理子の方をジロジロと見ている。
龍は一人、喉元を抑えて
「いでで・・なんすか?」と、顔を見上げる。
寺山の目線を辿って、

「麻理子ちゃ・・・」
「龍く・・・・」

二人同時にお互いの名前を口にするも、社内だということに気付き、次第に声のトーンを落とす。
「二人は知り合いなのかい?」
寺山は二人を交互に指差して尋ねた。
寺山と龍の後ろから早乙女夕子が麻理子を睨んでいる。

麻理子があっけにとられていると、背後から先ほどの女性社員がしゃしゃり出てきた。
「ねぇねぇ、紹介してよ麻理子っ 」
「あ、うん。 えーと」
手を広げてバスガイドの様に龍を紹介しようとする麻理子。
すると、寺山が、
「彼は今日からアルバイトで入った安達龍くんだよ。大学生だっけ?」
少々嫌味っぽい言い方だ。
「え・・あ・・・いや、2年浪人です」