「ど・・・・どこだ?」
「龍くん、もう忘れたのかね? あぁー龍くんがここへ遊びに来たのは5歳の頃だったか・・
ここで夕子と遊んだろう?」
奥に続くドアの奥から声は聞えてくる。
(5歳の頃なんて覚えてねーよ・・・)
返事をせずにそのまま奥の部屋へと続くドアを開けた。そこは・・・

真紅の絨毯が敷き詰められ、壁は白とグレーの2色を大胆に使った、大理石で施されている。
その奥に、大きな机と子供が学習するのに使いそうなイス、
そして右奥には 同じく、攻撃的な赤を主張としたリビングがあった。
「な・・なんじゃこの部屋は」
龍は思わず声にして出してしまった。

「はははっ 驚いたかい? 子供の頃は気にせず転げ回って遊んでたのになぁ」
部屋の隅で外を眺めている小太りの男性が、龍の方に向きを変えて言う。
「私はピンクの部屋の方が好きだったわ」
奥のリビングからは女性の声が聞えてきた。
龍があっけに取られていると、奥に居る女性は姿も現さずに話し続けた。
「まず、初対面のお客様、又は商談相手とはピンクの部屋で商談するのよ。
ピンク色はね、人を安心させる力があるから・・・」
目の前の男が凄みのある声で
「この部屋はな・・俺と共に戦う奴だけの部屋なんだよ。
ビジネスに癒しはいらないからな・・ アメリカの大統領と同じ、
勝負する時間は赤色に包まれていたいと思ってね。」

「は・・はぁ・・・ 」
(な・・なんか俺の知ってる早乙女のおっちゃんじゃねぇ・・・こえぇーよぉ~)
「あ、もしかすっと・・奥にいるのって夕子・・・ちゃん?」
リビングは社長室の右手に狭い通路があり、その奥から女性のスカートの裾らしい、
ヒラヒラとした黒いエナメル生地がチラチラと動いている。
どうやら女性はコーヒーを入れながら話しているようで、
奥から香ばしい良い香りが届いてきている。