麻理子は他の女性社員とは違って、結婚 という言葉に魅力を感じていなかった。
そもそも長年弟の恥部を嫌というほど真近で見てきたからか、
男というものにすら あまり興味がないようだった。
だが、そんな麻理子にも 寺山には 他の男とは違う、大人の男の色気を感じていた。
自分より2年先輩で仕事も安定している。 とりわけ日本の支部に滞在する事が多く、
やはり、海外出勤が多いと寂しいという女性もいて、その点でも人気だったのだが、
なによりも、ルックスと身のこなしに品があった。

休憩時間がおわり、身だしなみを整えた女性社員達が各部署へと入っていく、
麻理子とさきほどの女性は正面玄関を見渡す場所にある、受付台の裏で、
今日来社する客の資料に目を通していた。