ロッカーの扉の裏側には小さな四角い鏡が付いていて、それで化粧直しを
しようとしていると、
「ねぇー麻理子ぉー」
女子更衣室のロッカーで一人の社員が麻理子の近づいて肩を触った。
「んー?」
麻理子、財布をカバンの中にしまい、ついでにグロスを取り出しながら言う。
「昨日・・さぁー・・・裏口で寺山さんと何か話してなかった?」
「あ・・・あー・・・いやぁ」
「でも横に立ってたよね?」
「いやぁ・・たまたま・・ね アハハッ」
「ふぅーん・・・・・なんだ」
彼女は自分のロッカーを開き、徐にドライヤーを取り出して髪をセットしはじめた。
社の女性達は エリートという言葉に弱かった。
早乙女グループの中でも人気だったのが、情報テクノロジー支部の社員達だ。
次々に生まれてくる、安価で優れた性能、食材、素材に目を向けてどこより早く見つけ出し、
買い占める、貿易会社の軸となる支部に携わっている者達だからだ。
だが、そんなエリートな彼等は多忙なゆえ、日本に腰をかけている期間も短い、
だが女って生き物は どこまでも浅はかなんだろうか、
亭主元気で留守ならいい、又は「日本で浮気されてるよかマシ」と豪語する女性社員もいた。