龍は先に昼ごはんを済ませてから 早乙女グループのビルへと向かった。
父親のビルとは違い、スケールも、材質も高級そうだ。
綺麗なガラス窓張りのビルには、外の景色が移りこみ、
光の反射が外の景色よりも美しい空を描いていた。
正面玄関だけが黒く塗りつぶされていて、SAOTOMEとアルファベットで彫刻された表彰が設置されている。
全てがピカピカに輝いている。
龍はその建物に吸い込まれるように出入りしていく女性社員達のスーツ姿に
見惚れていた。
「普段・・女ってーと母(かぁ)ちゃんくらいしか見てねーから・・・うっまぶっ
どうして働いてる女ってこんなに輝いてんだぁっ」

社長室はぁ・・えーと・・・

玄関の自動ドアを通り抜けた所に社内案内の看板があったのでそこで確認している。
真横一列に削り線のある、ステンレスに 黒字に掘られた文字。 看板の角は触れると指が切れそうなくらい鋭利だ。

龍の背後を数人の女性社員が通り過ぎて行った。

皆一様に大きな財布を手に持っている。
お昼ご飯を外で済ませてきた帰りなんだろう。


その中に 麻理子の姿もあった。