龍はバイクをパン屋の店先に止めると、 ベルトを外して麻理子の肩を抱きながら
バイクから降りた。

真理子をパン屋の入り口にある、1段高い場所に座らせてから、バイクにかぎをかける。
龍は麻理子を座らせたまま、アパートの入り口を探し始めた。
すると、パン屋の左端に 狭い空間があり、その中に入ると、住民用のポストが横に10個縦に2こずつ並んで
壁に設置されていた。

ポストには小さな名札入れがあり、龍はそこに書かれた名前の中から石川姓を探しあてると、
麻理子の所まで戻ってきた。
麻理子は、だらしなくパン屋のドアにもたれ、寝息をたてている。
その姿を ただ呆然と疲れた顔で見下ろす龍。
眉間にしわを作り、いぶかしげに麻理子の顔を見続けている。
麻理子が起きていたら又硬直して何も言えなくなりそうな顔つきだった。

龍はその顔とは裏腹に、頭の中で真理子をどうやって4階まで上げればいいかだけを考えていた。
麻袋を担ぐように、麻理子の姿がどうであれ、荷物のようにかつぐのか・・・
それとも、やはり女性だから・・・彼女が痛くないよう、恥ずかしくないように運ばなくてはいけないのではないか?

龍は、真理子の足元に座り込んでさらに考え続ける。

すると・・