「居酒屋ってアレ?」
そう言って、又、麻理子の腕を引っ張って行く龍。
麻理子は左手の人差し指で左目を擦りながら龍の後を付いて行く。

店に入ると、テーブルも床もニスで出来た、渋みのある木を使ってあり、
カウンターの奥からは元気な声が聞えてくる。
「らっしゃあーい!」
食べ終わった皿を回収してきた女性店員が、お盆ごとカウンターの台に置くと、
腰から下までしかない、エプロンで軽く両手を拭いてから こちらに向かって歩いてきた。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
龍は まるで行きつけの店のように、2名 とだけ応えた。
女性の店員は 窓際の席へ二人を案内すると、すぐにカウンターに戻り 水と手拭を
盆に載せてやってきた。
「ご注文はお決まりですか?」
先に龍がメニューを見ながら注文する。
「えー軟骨のから揚げと手羽先とつくね、 ネギまと生中ね」

龍の家の近くでもこのような焼き鳥の飲み屋はあるのだろう。
注文の仕方がなんとなく慣れているようだった。
麻理子は・・というと、 さっき自分の部屋で食べたばかりで
あまり食欲が無いのか、 メニューとにらめっこしたままだ。
龍と店員が自分口が開くのを 気長に待ち続けているのが
俯きながらも、麻理子には気付いている。

(うー・・・何か・・何か早くきめなきゃ。 カロリーも気になるし・・)
「す・・・す・・・砂肝」