「えっ・・・あっ!」
慌ててカバンの中を探る麻理子、
「えーっと・・ っあー・・・な・・・い・ですねぇ・・。」
言葉を小出しにしながら折りたたみ傘を捜し続ける麻理子。
そこへ、
寺山の頭上に何かがにゅっと出てきた。 女性用の傘の先端のようだった。
二人、いきなり現れた物体にびくっと体を震わせながらのけぞり、後ろを振り無くと、
開いた傘を寺山の頭上に差し出しながら、麻理子を睨む女性がいた。
傘に似た、派手ないでたちで目鼻立ちもクッキリとしている。

麻理子はその女性を見て続けさまに驚いた。
髪型が同じ、もちろん顔も同じだった・・・龍の携帯の待ち受けに写る女性と。

「やっだぁーそんなに驚かなくてもいいじゃなーい。」
女性はそう言うと、半歩進んで寺山の腕に左手を通し、
階段を下りる。
寺山も その迫力に押されてか、彼女が通れるように、先に階段を降りた。
「あっ ダメですよ・・濡れてしまいます」
「いいからいいから。 一緒に帰りましょ」
「はい・・・そっ・・そうですね」
寺山と携帯の女は 駅の方に向かって歩き出す。
途中 呆然と立ち尽くす麻理子を心配してか、寺山だけが後ろを振り向いて
何か言いたそうにしているが、
麻理子は寺山には気付かず、携帯の女の後姿をただまじまじと見つめていた。