「こ・・・これ・・・・ 私こんなの撮ってないよ! 待ち受けにもしてないし・・・ え? あいつのイタズラ?」
そう言うと慌てて メモリダイヤルの一覧へのボタンを押す。
そこには 麻理子の知らない名前がずらりと並んでいた。

同じ新作の携帯で、 同じ黒色、ストラップはまだつけていなかった。
良く見ると、麻理子が気に入って貼り付けているシールがどこにも貼られていない。
「こ・・こんなことって!」

どうやら・・・ 今朝、ベッドの枕元から取ったこの携帯は龍の物だったらしい。

ー龍の場合ー

朝、痛みから目を覚ました時に、 腕の中に居た麻理子を見てからというもの、
龍の頭の中は麻理子のことで一杯だった。
トボトボと重い足取りで家路に着くと、おでこに右手の甲を当てて人差し指を伸ばし、
おでこごと、門のチャイムを押す。

「ぴんぽーん」
この仕草が気に入ったのか、 何度も鳴らし始める。
「ぴんぽーんぴんぽぴんぽぴんぽーん」

すると玄関の戸が開き、中から白いエプロンを見につけた龍の母親が出てきた。