白馬荘の看板を右に曲がると、旅館玄関から右手に駐車場が見えた。
そこに1台の大きなバスが停車されている。

「お、もう来てるぞ! いそごう!」
そう言うと 麻理子の手を離して龍は走りだした。
龍が白馬荘の玄関付近にさしかかるまで、麻理子は白昼夢をみているかのように
龍の背中を眺めて佇んでいる。

「あ・・・・うん。」
ようやく 声をだして 龍のあとを追う麻理子、
バスに近づくと、 龍は二人のカバンを、バスの運転手に差し出していた。

「この二つをお願いします。」
そう言って バスの荷物置き場近くまで持って行き、運転手さんと一緒に中の方へ押し込む作業を手伝う龍。
「では、35分に発射するので、もう席に座っていてください。」
運転手にそう言われ、 麻理子を先頭にバスに乗り込んだ。

バスの中には 先に乗車した客が大勢席を陣取っていた。
ゆっくりと体を横に向けながら進んでいくと、右奥から3列目しか開いていないことがわかった。

「一緒に座るしかないね・・・」
麻理子がそう呟いた。
龍は、麻理子の方をチラッと見て静かに俯いた。まるで先生から罰を受けて立たされている小学生のように。

バスは運転手の予告通りに35分に出発、 大阪駅へ向かう。