麻理子はもらった紙を大事に折りたたんで財布と一緒に持ち替え、ロビーをぐるりと見回してから、
龍のいる401号室に戻った。

「ただいまー ね、8時に「白馬荘」の駐車場に帰りのバスが来るんだってー!」
スリッパを脱ぎながら龍の方を見ないで言う麻理子。少し得意げに。
見上げると 龍は着替えを済ましていて、ベッドの足元に座り、肘を膝の上にたてて両手は顔を覆っていた。

「どうしたの?・・・疲れたの?」
そう言うと龍の足元でひざまつき、下から龍の顔をうかがった。
龍は少しずつ両手を広げて顔を出すと、麻理子の顔をまじまじと見て・・・

ガバッ!

いきなりベッドからすり落ちて麻理子が座っている床に両膝をつくと、 麻理子を抱きすくめた。
急に目の前が真っ暗になった麻理子は ただ驚いて硬直するばかりだった。
龍に両肩を拘束され、だらしなくプラーンと下へ垂れる両腕。

「む・・むぐ・・・・鼻が・・・・」
顔が龍の胸で押しつぶされ、息ができない。

麻理子はおでこで龍の鎖骨を押しのけて、ようやく胸と口との間に出来た、隙間で息をした。

「ちょっ ・・・スーー ふぅー・・・・ ちょっちょっと何するのよ!やめてよっ!」
「俺、ちゃんと責任取るから!」

「は?・・・・・あー ・・・宿泊代?二人で2万円だったよ。 朝食無しで2万って高くない? 半分払ってくれるの?」

「払う!っつか、俺が2万払うよ!」

「え・・・いいよいいよ・・・半分でいいわよ(なにこの変わり様・・・気持ち悪いよーしかもなんで抱きしめられなきゃいけないの?)」
麻理子は龍の腕を振り払って、 後ろへ下がった。