すぐに奥のスタッフルームから 一枚の白い紙をもって、さきほどのフロント係の女性が戻ってきた。
「お待たせしました、 これが大阪駅行きのバスの時間表と 停車場所の地図です。
えぇ・・と、バスはこの旅館の斜め前にある建物を二つ超えた所に「白馬荘」という旅館があるのですが、
そちらの旅館入り口前にある、駐車場内にバスがくることとなっております。」

フロント係の女性が窓の方を指差すので 麻理子も指に添って
窓の方に向いた。
大きな窓に白い十字の縁があり、左右には白く、半透明のカーテンがやんわりと美しい曲線を作っていた。
窓の外にはこの旅館の花壇が見え、その先には細い道路が横にのびていた、
右側の奥の方を見ようと上半身を屈めて目を細めると、 細い道路が逆L字に曲がっていて、上に伸びた道路の右側には
小さな倉庫のような建物とその奥には食品の工場のような建物があった。建物の周りは 雑草がやや伸びかけた状態で、
あまり見栄えが良いとは言えないが、その上に雪が山積みになっていてる。
夜になると雪に月明かりが反射して美しい夜景のように錯覚していた場所だった。

その先を見ると、昨日の夜、泣きべそをかきながら通った道が横に広がり、その角には荷物を置いてバスを探していた
「白馬荘」の看板が見えた。

「わかりました、あ、8時の次は12時ですが、その時も 白馬荘の駐車場が停留所ですか?」
「はい、そうです。 では、10時まで居室に居て頂いて構いませんので、どうぞおくつろぎ下さい。」
笑顔でそう言うと、フロント係の女性はスタッフルームに戻って行った。