麻理子の体重は自称60Kg、成人男性がお姫様抱っこするには少し無理がある重さだ。
お姫様抱っこするにしても この男は私の何処を持って・・・さわって・・・ いやぁああああ
このぶよっとした横腹も触られたのかしら・・・ 両手で右の横腹をつまむ麻理子。
「重い(おめぇ)んだよクソババァ!」とか暴言を吐きならが ベッドへ投げたのかしら・・
うん・・・うん・・・この冷たい男の事だから 私のこと「デブ」とか「ブタ」という単語で苛めたのは
判りきってることだわ・・・ あぁなんてこと!

頭を掻き毟りながら 、洗面所へ行く為に龍を飛び越えて行った。
もはや 私のぶよちゃんを(脂肪である)知られたからには乙女の恥じらいも何もないわ。
大阪駅に着くまでの我慢よ。いいえ、バスに乗るまでの我慢よ!
旅の恥はかくもんだって言うものね・・・これも良い想い出になるわよ。

しかめっ面で勢い良く顔を洗い、未使用のタオルで顔の水滴をふき取り、 ドライヤーで髪をセットした。

「あ、宿泊代先に払っておこう・・バスの時間と場所も教えてもらって、確認しておこう」
独り言をいいながら洗面所の戸を開けようとすると・・ 開かない。
何かがドアの外で邪魔をしているようだった。

「力技ーーー!」
グイッグイッと戸を押し続けると 15cmほど開くようになった。だが、押しつづけていないと又、ドアは閉まるようだった。
開いたドアの隙間からは、寝返りを打ってドアにもたれかかっている龍が見えた。

「おまえか・・・・」

麻理子はドアから精一杯手をのばし、龍の肩を押して、毛布の入ってあった戸棚の方へ押しやろうとする。

んーーーっ んーーーっ

龍は膝を洗面所のドアにもたれさせていて、 その重みもあって なかなかうまくいかない。