確かめるように白いシーツに手を触れて、滑らせる。
木綿の生地の心地よさと 甘いぬくもりが手に伝わってきた。

視界がだんだんとクリアになっていき、目覚まし時計を見つけると アラートONをOFFに変えた。
そして再びゆっくり部屋を見渡した。
「そうだ・・・私一人でスキー旅行に来ていたんだった・・・
で・・・バスに乗れなくて・・・・・。」

「安達・・・さん?」
自分が寝ていた毛布のある場所に、 見覚えのある男が丸くなって寝ているのを確認した。。
「なんであんなとこで寝てるの?」

「ん・・・・ふぁああ 気持ちよかった・・・。」
あ、今何時だっけ? 麻理子は枕元にある、携帯の表面にある、小さな液晶画面を見る。
「えーっまだ6時20分? まだ眠いよー・・・ハッ!」
麻理子は慌ててベッドの下にある自分のカバンを開けた。

「今日のバスの時間確認しなくちゃ・・・えーと。最初のバスは・・・」
「8時・・・ね。その次が12時か・・・大分時間が空くのねー」

麻理子は顔を洗おうと玄関の横にある洗面所に向かってよたよたとフラつきながら歩いた。
毛布に包まった龍の場所まで歩くと うすらぼんやり開いた目でそれを確認し、 無意識にしゃがんだ。
薄茶色の薄い毛布から龍の顔を覗き込む。 静かな寝息を立てているようだ。
「よく見たら可愛い顔してるのね・・ふーん。 凛々しい眉毛・・・」
「ちょっとー ここで寝られたら洗面所に行けないじゃなーい!まったく・・・なんでこんなところで。」
そこまで言いかけて 麻理子は再びハッとして、口が開いたまま固まってしまった。

(私、ソファーでも床でも玄関で体育座りでもいいです。)
昨日、自分がした宣言が、頭を過ぎった。

「あぁあああぁあああ はちゃぁあああ ってことは・・・ はっ」
次の言葉が出てこない麻理子。 龍の寝顔を見下ろしたまま、絶望的な顔でまた固まっている。

どうやって 私をあそこまで運んだの?