寺山は夕子を守りたくて必死だった。
白地に灰色の縦ストライプが入ったブラウスの裾を、
黒いタイトなミニスカートの中に入れている、
腰元で絞られたブラウスはゆるい膨らみを作り、夕子のウエストラインの美しさを
見せ付けている。
細く長い袖からは白くて華奢な手の甲が伸びている。
小指には小さなシルバーリングが輝いていた。
どれをとっても、夕子の魅力で、
寺山も丸山と同様に、少しの間魅入ってしまっていた。

「夕子さんに挨拶だけでも・・・・」
そう呟いて丸山は、一度座りなおした尻を持ち上げた。

「いや・・・・・用件の無い時にいきなり挨拶だけというのは・・・」
寺山は心の中で何パターンかの、諦めさせる為の言葉を考えていた。
その中でも丸山の機嫌を損ねない言葉を見つけようとしていたが、
何も思いつかなくて曖昧になってしまう。

そんな寺山の努力も空しく、 夕子が真横を通り、寺山の方をチラリと
長いまつ毛を向けた時、丸山はチャンスだとばかりに声をかけていた。

「ゆ・・・ 早乙女社長の娘さん?だったね」
緊張しているのか、早乙・・の部分の声が裏声になっている。

「こちらは・・・・?」
夕子は 寺山に微笑んだ後、 口元のゆるみを元に戻し、
首をかしげて丸山に会釈をした。。

「太平洋貿易センターの輸入販売部の取締役、丸山様です。」
続けさまに
「これから商談があるので、外出してきます。」
と夕子に告げると、 丸山に
「では行きましょうか」
と促した。
さすがに丸山もこれ以上何も言えず、
「あ・・・・あぁ、では 又」
とだけ夕子に告げて、しぶしぶ寺山の後に続いて玄関の方へと向かった。

【つづく】